『想いを形にしてみませんか』

講師 和合 亮一

こちらの作品は、詩のワークショップに参加された皆さんが、胸の奥にしまい込んでいた大切な「想い」を形にしたものです。
ふるさとを離れ、復興公営住宅で暮らす皆さんと詩人・和合亮一先生のワークショップは、好きな言葉を30個書くことから始まりました。
書き終えたシートを見せていただくと、「新潟」「上越市」と書かれた方がおられました。理由を尋ねると「避難したまちです」と、教えてくださいました。
「ネイル」と書かれた方は、「心がもやもやしてくるとネイルをするの。でも、そういう時ってなかなかうまく塗れないのよ。除光液の減りが早くて、お店の人に『もうなくなったの?』と聞かれることもあるの」と、教えてくださいました。
「仏壇の前で話す」と書かれた方もおられました。

30個の中から好きな言葉を3つ選んでつないだり、自分の言葉にほかの方の好きな言葉を加えた3つの言葉をつないだりした後、「ふるさと」について思い浮かぶ言葉を白い紙にたくさん書きました。
なかなか書き進められないでいた方は、得意な料理を皮切りに、旦那様の船の名前、釣れた魚の名前をいくつも紙いっぱいに書きました。
言葉を集めて塊にして詩に仕上げた後、朗読する際に感極まる方もおられました。
言葉がその人の思いや記憶を呼び起こす力があることに、改めて気づかされました。

「思い悩んだりした時に、何か書いてみると生き方が変わってきます。一日の中で少しでも紙に向かって書き続けることで、誰でも詩人になれます」と和合先生。
書いたものは鏡。好きな言葉を書くだけで、なんとなく自分がわかって来るともおっしゃっていました。
みなさんも好きな言葉を30個書き出してみては。何か見えてくるものがあるかもしれませんよ。  

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INSTRUCTOR

福島県出身。福島大学卒業。詩人。国語教師。第一詩集『After』で第4回中原中也賞受賞、第4詩集『地球頭脳誌篇』で第47回晩翠賞受賞。第30回NHK東北放送文化賞受賞。東日本大震災では自らも被災し、Twitterで『詩の礫』を発表した。2017年、『詩の礫』のフランス語版が第一回ニュンク・レビュー・ボエトリー賞を受賞し、日本文壇史上初となり話題を集めた。2019年、『QQQ』で第27回萩原朔太郎賞受賞。合唱曲や校歌の作詞多数。福島県教育復興大使。福島県大学応援大使。ふたばの教育復興応援団。朗読パフォーマンスは国内のみならず、海外のイベントでも大会評価を受けており「サムライリーディング」の異名を持つ。来春にアメリカにて英訳特集が出版予定。これまで詩のワークショップを全国各地で行い、詩人を多数輩出してきた。

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